東京地方裁判所 昭和38年(ワ)4513号 判決
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〔判決理由〕現行法の下においては、取締役会の運用は一面厳格たることを要するが、他面現行株式会社法は大資本会社への適用を予想して制定せられているに反して、現実には株式会社とは名ばかりの個人経営的な小株式会社があまりにも多く存し、かかる実態に照らすときは、取締役会についても、あまり厳格な運用を要求するときは、徒らに決議の無効を招来し、かえつて法律の精神に違背するものといわねばならぬ。かかる見地に立つときは、商法二五条ノ三に規定する取締役会の招集手続を省略する取締役全員の同意も意思表示の一般的な原則に従い、必ずしも明示的なことを要しないのみならず、いやしくも、取締役全員につき業務執行事項の意思決定に参加する意思に基づいて、その意思決定のなされている以上、特段の事情のないかぎり、右招集手続省略の暗黙の同意がなされていると同時に、当該決定は違法な取締役会の決議に外ならないものというべきである。而して成立に争いない第二〇号証……によれば、右会社は、設立当時資本金二百万円の会社であつて、事務員も取締役たる被告金児三郎を除けば、僅か三名位であり、事務室も他の一社と合せて四坪位であり、当時の取締役中訴外鈴木増太郎は代表取締役たる原告の妻の実父であることが認められ、この認定を覆えすに足る証拠はない。してみれば、右丸増鉄銅は、株式会社とはいえ極めて規模の小さいものであつたということができる。又証人鈴木知江(第一回)の証言によれば、右丸増鉄銅が前記債務を引受ける際当時の取締役全員は(但しこの場合原告は特別利害関係人となるので、議決権を行使し得ないことはいうまでもない)、右事実を知り乍ら、これに反対の意見を述べなかつたことが認められ、右認定を覆えすに足る証拠はない。然らば、特段の事情の認められない本件にあつては、右丸増鉄銅の前記債務引受行為については右会社の取締役会の適法な承認があつたものと解するのが相当である。 (中島恒)